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2023年7月1日
■【はじめに】天皇皇后のインドネシアご訪問
先日、天皇皇后両陛下がインドネシアを訪問されましたね。
天皇陛下がボロブドゥール遺跡を歩かれる様子や、皇后様がバティック製作を体験されたりする姿が報道されました。バティックを肩に羽織った皇后様の笑顔がとても印象的でした。
■【今月のトピック】バティックの紋様には意味があるんです
バティックとは、ひと言で言えばインドネシアのろうけつ染めです。ろうけつ染めとは、熱したロウで布に紋様を描いてから染料に浸すと、ロウを塗った部分には染料が染み込まず、ロウをお湯で洗い流すと紋様が白く浮き出る、という現象を利用した技法です。
バティックの作成工程については、こちらでも紹介していますので、ご覧くださいませ。
そもそも、なぜロウを使うようになったのでしょうね。きっと最初は、灯りに使っていたロウをうっかり着ていた服に垂らしてしまい、そのまま野良仕事をしていたら、その部分だけ草の汁や泥に汚れなかった、なんてことから始まったのではないでしょうか。「試しにロウで絵を描いて、草花の汁で染めてみよう」などと、楽しみながら発展してきたのではないかなと、私は勝手に想像しています。
昔から、バティックを作るのは女性の仕事だったようで、各家庭で糸を紡ぎ、布を織り、身につける人の健康や幸せを願いながら紋様を描いたそうです。
バティックに描かれる紋様は実に様々で、それぞれに名前と意味があります。
たとえば、天皇陛下がボロブドゥールを見学されたときにお召しになっていたバティックには、小さな花柄模様のようなものがたくさん描かれていますが、これは「トゥルントゥン」という紋様です。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230622/k10014106311000.html
小花に見えますが、夜空の星を表しているそうで、この紋様の誕生にはこんなエピソードがあります。
ソロ地方の王宮に嫁いだ王妃が、あるとき王と不仲になってしまい、孤独な日々を送っていました。ある晩、夜空の星に希望を託しながらその星をバティックに描いていたところ、王がその姿を見つけて王妃の一途な心を知り、再び愛が芽生えた、というものです。よってこの「トゥルントゥン」は、「愛の芽生え」とか「辛い時も希望を持つ」というような意味があるそうで、結婚式のときに花嫁の母が、真の愛への導きを込めてこの柄のバティックを身に着ける風習があるのですって。
もう一つ、よく用いられているパラン紋様をご紹介。こちらは剣を表す紋様を斜めに連続に配したもので、「戦い」「権力」「強さ」を意味しています。剣には見えないかもしれませんが・・・。
戦いを意味するので、結婚式で着てはいけないそうです。
トゥルントゥンとパランについては、こちらのバティックをご参照くださいね。
- 2023.11.29
- 14:10
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